2008年2月28日木曜日

少女は、池袋の街を歩いていた。   継続中

少女は、池袋の街を歩いていた。
騒がしい街だが少女にとっては居心地のいい街でもある。
何か悲しい街でもある。
少女はいつもこの街にいた。
少女は、自分が何故、ここに存在しているのか、だれかに教えてほしかった。
ものの本にも、答えは書かれていなかった。
誰も教えてくれない。
まわりの人たちは自分の存在理由を知らなくても、楽しそうに生きている。
何故なのか?
少女にはわからない。
誰に聞いても存在理由はわからない。
神様は知っているのだろうか?

 少女の名前は沙耶。
都内の私立高校に通う聡明な美しい少女である。
沙耶の友達も学校の生徒たちもみな楽しそうに生きている。
本当にたのしいのだろうか?
嬉しいのだろうか?
沙耶には、わからない。
友達といる時は、いつも明るくしている。
よく笑っている。
自分が考えていることが笑われそうで、あまり話せない。
人間の存在理由とか、重い話はみんなが嫌うし、何か恥ずかしいようで、気取っているようで、嫌だ。
男の子たちは、親しげに話してくるが、全てが下心をもっている。
全ての女の子たちは、それを知っている。
ほんとうの愛情をほしがっている子もいる。
沙耶はそんな愛情よりも、人間の真実を知りたかった。
何故、人間はここにいるのか?
何故、人を愛することがすばらしいことなのか?
何故、憎むことがよくないことなのか。
この世の中で、お金持ちと貧乏人が同じ空間で存在しているのは何故なのか?
大金持ちは、昔から大金持ち、搾取するだけ。
人びとを騙し、莫大な利益を得ている。
何故、そこまでの利益が必要なのか?
ほんとうに莫大な利益を持った人間たちが存在しているのか?
一般の人びとには、そういう人たちの影らしきものしか、聞こえてこない。
殺人が繰り返されるこの世の中、戦争が繰り返されるこの世の中、何が正しいことなのか?
ほんとうにそれは必要なことなのか?
それは、憎むべきことなのか?
それとも、愛すべきことなのか?
戦争は必要悪なのか?
沙耶は、独りでそれらのことについて、調べてみるのだが、結局は、それらについて、真の答えを持っている人間がいるのか、いないのか、さえもわからない。
いないのだろう。
図書館に、こもり調べ続ける。
哲学、宗教、数学、物理、化学、どの書物にも答えはない。
この人間の長い歴史のなかで、それを解明したものはいないのか?
神は、人間にそのことをおしえてくださらないのか?
それとも、人間が知る必要がないことなのか?
人間が知ってはならないことなのか?
神とは、存在しないものなのか?
人間は、別のあるものから創り出されたものなのか?
神とは、そのもののことなのか?
人間は、地球の上で動き回るだけの小さな生き物というだけのことなのか?
それとも、人間が人間を作ったのか?
人間を造った人間はこの地球にいないのか?
他の星に移り住んでいるのか?
他の星が地球より前にできていたのか?

沙耶は、考えた。
人間が神によって創られたものならば、その人間を殺せば、その人間を創ったものが、なんらかのことを教えてくれるのではないか?
神が存在するならば、神が創りたもうた人間を幾人も幾人も殺し続ければ、神の意思に背くことになる。
神の損失となる。
神は、そのようなことを許しておくはずがない。
許すのか?
そのままに、するだけなのか?
人間、人類全てを殺しても、神にとっては、取るに足らないことでは、ないのか?
神は、実験をしているのか?
人間というものが、どのように進歩をしてゆき、どのようにして滅んでいくのか、いままでも、何度もテストしてきたことなのか?
恐竜の時代、また、他のものの時代。
その全て、テストした結果なのか?
恐竜を絶滅させたものに、何か起きたのか?
人間を大量に殺す。
人間を大量に生まれさせる。生産する。
そうすることによって、神は喜ぶのか?
人間を創り過ぎるとどうなるのか?
人間という生命が必要なのか?
人間のような生物ではなくて、人工的に創られたもの、ロボットのようなものを増やすことでも神は満足するのか?
しないのか?
殺すこともせず、生かすこともせず、ただ、何もせず、寿命を全うすることが神を喜ばすことになり、最後には、人間の存在理由を教えてくれるのか?
大量殺人をする人間は、神から何かを教えてもらったのだろうか?
何かを知っているのか?
神に選ばれて、殺人を犯したのか?
神にとって必要のないものが間引かれたのか?
死ぬことがすばらしいことなのか?
生きることがすばらしいことなのか?
人間を苦しめて殺すことがいいことなのか?
苦しめて殺せば、神は真実を教えてくれるのか?
戦争では、多くの人たちが死んでいった。
多くの人を殺すことが、兵士にとって、正義であった。
その正義は、神に認められたことによって、正義となったのか?
それとも、人間の正義なのか?
神は、大勢を殺した兵士たちに、真実を伝えたのか?
教えたのか?
真実を知ったものは、死んでいったのか?
真実を知ったものは、生きているのか?
死んでも、生きても、神は何も教えなかったのか?
真実を知るためには、神に自分自身で会うのがいいのではないか?
神に会うにはどうしたらよいのか?
神に会うには自分の命を捨てること。
死ぬことなのか?
天国にいるのが神なのか?
地獄にいるのが神か?
そのどちらにもいないものが神なのか?
神は、私なのか?
神は、人間なのか?
神は、崇拝されているものなのか?
神は、ひとりなのか?
多数なのか?
大勢の善良な市民は、神の存在を信じている。
だが、真実は知らされていない。
大勢の人を殺した兵士、大勢の人を殺した犯罪者、彼らもまた、神から真実を教えられていない。
では、誰が教えられたのか?
だれも教えられていないのか?
この世には、神に会ったというものが数人いる。
彼らがいうその神というものは、本当の神だろうか?
もし、本当の神であれば、何故、数人にしか姿を見せてくださらないのか?
何故、苦しむ人を助けてくださらないのか?
何故、この不平等な世界を存在させているのだ。
神に会った人たちは、何故、合うことができたのか?
正しいことをしたからか?
人を助けることが正しいことなのか?
生き続けると苦しみが多いだけではないのか?
苦しみがなく、すぐ、死ねたほうがいいのではないか?
苦しみのない人間がいるのか?
もし、苦しみのない人間がいるとすれば、それは、人間なのか?
神は、特別な存在を創造したのか?

神を冒涜してみることはどうだろうか?
神の悪口を言う。
神をけなす。

意味のないことだ。

神は全てのものに存在するという言葉がある。
神は、全てを見ているという言葉もある。
では、神は、全てのことを知っているのであれば、私が隠れて何をしようが神は、知っているということなのか?
神が全てのところにいるということ、全てのものに存在しているといくこと、全てを知っているということ、これらから、考えると、神とは、地球そのもののことではないのか?
人間は、地球の上に存在している。
神が地球ならば、地球の上で行うことは、神は、知ることができる。
そうではないのか?
地球というものは、地球に存在しているものを含めて、地球というわけだから、地球の土も地球であり、その上に存在している生き物、生物、人間、木、風、水、空、空気、これらのもの全てが地球ということになる。
神が地球ならば、その上で存在している生物もまた地球であるということは、人間もまた神であるといくことである。
では、神である人間が何故、苦しむのか?
それは、神ではないのか?
神でない証拠をだしているのか?
地球というものは、大きな宇宙の中のひとつの星である。
宇宙というものは、さまざまな星星が集まったものからできていると考えられている。
宇宙のひとつ。
宇宙の中にある地球もまた宇宙を構成しているものである。
宇宙を構成しているものが、宇宙ならば、地球もまた宇宙である。
ということは、地球は宇宙、宇宙は地球、太陽は宇宙、宇宙は太陽、地球も太陽、太陽も地球、地球も宇宙、宇宙は人間、宇宙は神、神は宇宙。
宇宙が神ならば、宇宙の一部である地球は神であり、神の一部である。
生物、人間も神である。
ぐるぐる回っている気がする。
これも神の罠なのか?
神を見つけられないように、神は、罠をしかけてあるのか?
これを突破したもののみ、神の存在を知ることができるのか?
これらのことから考えて、神は、宇宙であるとなると、人間の知るあらゆるもの全てが神であるということになる。
では、神は、神は私だ。
神がすることには、間違いがないといわれている。
では、私が殺人をしようとも、私が人を生かそうとも、私が盗みをしようとも、私の全ての行動は神がしているのだから、正しいということになる。
では、私があらゆることをしてみようと思う。
まず、手始めに、何からしようか?
いいことか、悪いことか、恥ずかしいことか、素敵なことか?
絶対数の少ない犯罪がいいのではないか?
私は、神だ。
私のすることに、間違いはない。
私の全てが、善だ。


沙耶は、街をぶらついている。
ゆっくり、ゆっくりと歩いている。
学生服を着たままの沙耶は、美しい。
中年のサラリーマンがそろりと近づいてくる。
沙耶の体を舐めるように視線を送っている。
「おねぇちゃん、ちょっと、一杯、付き合わないか?」
沙耶の胸を見ながら、へつらう。
間を置いて、沙耶は答える。
「いいよ」
沙耶の微笑が男に向けられる。
男の顔には、卑しい笑顔がのり、ヤニで黄ばんだ歯をだしている。
男は、沙耶を地下にある古びた居酒屋へと連れてきた。
煙草の煙で満ちた、その居酒屋は労働者風の人びとで混雑していて、むっとするにおいが満ちていた。
男は機嫌がよく、ひたすら喋っていた。
沙耶は、ほとんど聞いていなかった。
唾を飛ばしながら話す男の口を見ていた。
ネチネチと沙耶の体を見る男の目に、沙耶は、吐きそうな気分をおさえていた。
この愚鈍なもの、爬虫類、存在する必要のないもの。
男は、沙耶をホテルに誘った。
沙耶は、静かに、ついて行った。
一緒に、シャワーに入ろうという男に、断り、男に先に入るように言った。
男は、シャワーを早めに上げて出てきた。
沙耶は、シャワーを浴びにバスルームに入る。
すりガラス越しのシャワー室をのぞいている男の視線を感じでいた。
沙耶は、時間をかけてゆっくりとシャワーを使った。
沙耶がシャワーを終えて出てくる。
男は、待ちきれなかったのか、丸裸のまま、眠りこんでいた。
沙耶は、カバンから大きなナイフを取り出した。
男の体にそっと、またがる。
男の寝顔をそっと、覗き込む。
表情のない沙耶。
両手で、ナイフを逆手に持つ。
頭の上にナイフをゆっくりと持ち上げる。
一気に振り下ろす。
ナイフは、男の左胸に深々とめり込んで入った。
ナイフの長い刃の部分が完全に体に埋まった。
男の体が、ビクッと跳ねる。
男の目は、沙耶に向けられているが、焦点がずれている。
沙耶は、ナイフを静かに引き抜く。
沙耶は、男の胸から、流れ出る血を見ていた。
ドク、ドク、ドクン、ドクン、血があふれ出てくる。
沙耶はあふれてくる血を手で、男の胸一面に塗り広めた。
自分の乳房にも、血を塗りたくった。

沙耶は、シャワーを浴びる。
丁寧に丁寧に体を洗う。
ナイフもきれいにきれいに洗う。
着替えて、静かに、部屋を出て行った。
落ち着いた足取りで、長い廊下を歩いていく。
ホテルの外には、心地よい風が吹いていた。
風にふわりと揺れる髪。
ホテルのすぐ脇の角の自動販売機でオレンジジュースを買った。
自動販売機によりかかり、オレンジジュースをゆっくりと喉にながしていく。
喉を通り、体の奥深くへと流れていくオレンジジュースを感じていた。
沙耶は、何かいままでと違うものを感じていた。
いままでの自分から脱皮したような、心の何かがとれたような、台風が過ぎた次の朝のすがすがしい空気のような、すずやかな心になっていた。
何の恐れもなく、何の欲望もなく、ただ、存在を感じていた。
自分は、確かに、いま、ここにいる。
なにものでもない自分が、今、ここにいる。
空を仰ぎ見た。
星も月も何も見えない空。
それでも、今の沙耶には、きれいに見えた。
ジュース缶をゴミ箱に入れた。
メトロポリタンの方へとゆっくりと歩いていく。
ひどい酔っ払いのおやじが声をかけてくる。
今までと違い、嫌悪感も何も感じない。
心に怒りも震えも何も生じない。
メトロポリタンを仰ぎ見る。
深夜のこの時間、窓の灯りは少ない。
メトロポリタンへと入っていく。
上の階で部屋に入る。
父と母は旅行中のため、沙耶はこのホテルの一室を与えられていた。
一週間だけのホテル住まい。
大きな窓のカーテンを開け、眼下にある池袋の街を見下ろす。
いつもと変わらない池袋の夜の街。
シャワーに入った。
赤ワインを飲んだ。
そのままベッドに倒れこんで眠りに落ちていった。

翌朝、学校に登校した。
どしゃぶりの雨だ。
真っ赤な傘を差して、ホテルを出た。
男を殺したホテルの前を通っていく。
ちらりとも見ない。
視界にも入らない。
何の感情もなく、ホテルの前を通り過ぎてゆく。
公園に入っていく。
大きな噴水では、ハトが水を飲んでいる。
ハトたちの間をぬって、歩いていく。
ホームレスがベンチに寝転んでいる。
会社へと急ぐサラリーマンたち。
ヒールを鳴らして、女王様のようにあるくOL。
沙耶は、池袋の駅へと入っていく。
地下道をゆっくりと景色を見ながら歩いていく。
改札を抜け、階段をゆっくりと上り、大勢の人びとがひしめいているホームへと出た。
いつもと変わらぬ風景。
だが、沙耶にとっては、いつもとは違う風景に見える。
目的の電車に乗り込む。
満員電車の中。
誰かが、おしりを触っている。
そのままにしておく。
嫌でも、何でもない。
若い男が、助けてくれた。
おしりを触っていた男は、人ごみの中へと逃げていった。
沙耶は、若い男にお礼を言って、その場を別れた。
「いい人も、いるんだなぁ」
沙耶は、学校に行くのをやめた。
渋谷に行った。
洋服を買い、着替えた。
学生服は、コインロッカーに入れた。
電車に乗って、上野へと向かった。
動物園で動物を見た。
美術館へと入り、一枚一枚、丁寧に絵を見て、まわった。
絵の美しさにこれほど感動したことはなかった。
写真美術館へも入った。
キャパの写真展だった。
そこには、悲しい人たちがたくさんいた。
キャパの生き方に感動していた。
美術館を出て、もう一度、動物園に入った。
親子連れ、カップル、さまざまな人がいた。
動物園で、今朝、会った若い男に会った。
若い男は、沙耶に気づいた。
若い男は、沙耶に話しかけてきた。
「今朝は、大変だったねぇ」
沙耶は、軽くうなづくだけだった。
男は、いっしょに動物園をまわろうと言った。
沙耶は、うなづき、二人並んで、ゆっくり歩いた。
一時間ほど、いっしょにみてまわり、園の外に出た。
若い男は、そのまま、いっしょに歩いた。
若い男は、会社が休みなので、いっしょに暇をつぶしてくれないかと言った。
沙耶は、了解した。
日が落ちて、居酒屋に入った。
二人は、とめどもなく、話し続けた。
沙耶の気持ち。
沙耶は、人とこんなにたくさん長く話したことは、いままでないというほど、たくさん話した。
若い男もたくさん話した。
ふたりは、話がよくつづくよねぇといって、笑いあった。
ふたりとも、しゃべりにしゃべった。
二人とも楽しかった。
四時間ほどがあっという間に過ぎた。
携帯番号とメアドを交換しあい、その場を別れた。
沙耶は、池袋に帰り、街をぶらついた。
すぐに、おやじが声をかけてきた。
きりっとした服装で金持ちそうだ。
沙耶は、暇つぶしにそのおやじについていった。
おやじは、喫茶店でしゃべりはじめた。
どうでもいいようなことをしゃべっている。
しばらく、沈黙があった。
おやじは、手のひらを見せて、これで、どうだ、といった。
五万円の意味である。
沙耶は、オーケーした。
沙耶は、男の後に、シャワーに入った。
男は、ベッドで待っている。
沙耶は、シャワー室を出て、男の方へ向かっていった。
男に、言った。
やる前に、お願いがあるんだけど・・・。
あなたに、目隠しをしたい。
最初の十分だけ目隠しをしてほしい。
男は、なにやらうれしそうに、そわそわしながら、すぐに、自分で目隠しをして、喜んでいた。
沙耶は、かばんから大きなナイフを出した。
男にやさしい言葉をかけながら、男の腹の上にまたがった。
男は、喜んでいた。
沙耶は、男の左胸の上にナイフをあてがって、止まった。
ナイフに全体重をのせた。
ナイフは、男の体にすいこまれていった。
意外とナイフはするりと滑るように入っていった。
男の体は、びくんと一度、ふるえて、動かなくなった。
ナイフを引き抜くと血が吹き出てきた。
沙耶をその血を手に受け止め、自分の顔に塗りつけ、乳房に塗りつけ、又に塗りつけ、足に塗りつけ、体中血で赤く染めた。
沙耶は、興奮していた。
人間の死によって、興奮していた。
沙耶の左手は、自分の乳房を揉みしだき、右手は、股間に手を当てていた。
声を張り上げていた。

沙耶は、シャワーを浴びている。
丹念に体中を洗った。
体をきれいにした。
血を残らず、きれいに洗い流した。
沙耶は、着替えて、ホテルをでた。
自動販売機で、オレンジジュースを買って、ゆっくり飲んだ。
生きている感じを味わっていた。
とてもすがすがしい沙耶は、心のそこから、喜びが湧き上がっていることを感じていた。
沙耶は、三人目の男とホテルにいた。
男の胸にナイフを突き刺し、引き抜いた。
傷口からあふれる血。
傷口に唇をゆっくり、近づけ、血を吸い取った。
喉をならして、飲み干す。
顔中を血だらけにしながら、飲み続けた。

新聞では、ホテルでの連続殺人で大騒ぎ、テレビでも大騒ぎ。
沙耶は、少しも、気に留めていなかった。
沙耶は、四人目を殺した。
そのときは、何故か、満足感が得られなかった。
自分の手首を切った。
手首の傷から溢れる血を見ていた。
沙耶の顔には、痛みの表情はない。
すこしづつ、沙耶は、興奮してきた。

沙耶は、古い喫茶店の一階にいた。
沙耶の他には、四、五人の客がいた。
店員は、一人。
店員は、コーヒーを淹れていた。
沙耶は、かばんの中の失神させる神経ガスを静かに放出させた。
沙耶は、息をとめながら、トイレにはいる。
トイレで防毒マスクをはめる。
表の看板は、店に入るときにクローズにしておいた。
二、三分後、沙耶はトイレからでてきた。
店の中の人びとは、全員、倒れていた。
厨房の人も倒れていた。
沙耶は、窓のブラインドをすべて、下ろす。
沙耶は、店の奥にあった長いアイスピックを手に、戻ってきた。
痙攣している人びとの心臓を、その長いアイスピックで刺していった。
沙耶は、店の入り口にあったバットを持ってきた。
ひとりひとりの頭を叩き割った。
脳みそが飛び出た。
体も殴り続けた。
沙耶は、返り血を浴びながら、喜んでいた。
目は、大きく、見開かれている。
恍惚の状態にいた。
その時、店全体が揺れた。
店の入っているビルは五階建てだったが、一息に完全にビルは、つぶれた。
大爆音と共に店は、ぺしゃんこになった。

それから、数時間後、沙耶は、助けられた。
テレビカメラ、報道陣、野次馬に見守られるなか、沙耶は、レスキュー隊に助けられた。

沙耶は、奇跡の人として、テレビ、新聞で大々的に報道されていた。
倒壊したビルで助かったのは、沙耶だけだった。
沙耶は、数日後、病院のベットで目を覚ました。
沙耶は、テレビで報道されている自分をみた。
沙耶は、個室の部屋にいた。
沙耶の口元は、笑っていた。
テレビのコメンテイターは、ホテルの連続殺人のように、嫌なことばかりのときに、沙耶のように奇跡的に助かる人がいることは、うれしいことだといっていた。
悪いニュースの後に、いいニュースがあるのは、うれしいことだといっていた。
沙耶は、つぶやくように言った。
「これが、世間なんだなぁ」
沙耶は、次の日に退院した。

何もいわずに病院を出て行った。
それからの沙耶は、まじめに学校に行った。
普通に、友達と笑いあっていた。
ニュースでホテル連続殺人のことをいっていた。
沙耶は、友達と笑っていた。

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