2008年2月28日木曜日
42 カラス
一羽のカラスが、その男の頭上で鳴いていました。カラスは、木の枝のあちらこちらに飛び跳ねては鳴き、下のベンチに座っている男を見ては鳴き、を繰り返していました。男はカラスにいっこうに関心を示さずに、電話帳の2冊分はありそうな分厚い小説本をかじりつくように読んでいました。カラスは自分をぜんぜん相手にしない男に腹をたててしまい、つい、鳴かずに人間の言葉で言ってしまいました。「やい、下の男!おれがこんなに騒がしく鳴いているのに、完全に無視しやがって、何がそんなにおもしろくて、本を読みつづけていやがんだ。」男はその言葉に身体を微塵も動かさずに、首だけ、カラスの方に向けて、言いました。「わたしは、本を読んでいるのではない。あなた方カラスが違反をしないか、監視しているだけだ。残念ながら、あなたは、今、人間の言葉をしゃべりましたね。違反です。さっそく、あなたを処分します。あなたには、罰として、人間になってもらいます。以上。」その言葉が終わると同時にカラスは消滅し、ベンチの男の横にサラリーマン風の男が座っていました。サラリーマン風男はすぐに、立上がり、足早に、どこかに行ってしまいました。残された男も、いつしか姿が見えなくなってしまいました。
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