2008年2月28日木曜日

53 人形

その人は、人形を創っていた。いくつも、いくつも、創っていた。部屋の中は、人形で埋め尽くされていた。創っても創っても、その人の望んでいるものには、ならなかった。日々、人形のことだけを考えている。歩きながらも、食べながらも、何をするときも、人形のことを考えている。その人が、創りあげようとしている人形は、かわいい人形ではなく、きれいな人形でもなく、美しい人形である。かわいい人形、きれいな人形は、できているのだが、美しい人形だけは、なんど創っても、美しくならないのだった。一見すると、美しいのだが、かならずどこかに、美しくない部分が入ってきてしまう。その人は、ここ数日、うまくできないのは、自分の心に問題があるのではないかと考えていた。自分の心の奥底に潜む闇が、人形に反映されているのではないかと。しかし、その闇を消すことはできない。闇は、その人の過去でもあったからである。

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