ある寒い日のことです。
その女は、暗くなったさびしい道をあるいていました。いつもの帰り道ですが、この日は、いつもとは何かが違うよう気がしていました。周りの木々のざわめきが妙に耳の奥へと響いてくるのです。自分の靴の音もあたりに響いています。誰かがいるような、観ているような感覚を背中に感じるのですが、振り向いてみることはできません。そこにいるものが自分にとって望ましくないものであることが感じとれたからです。女は自分の高鳴る鼓動で、身体じゅうが小刻みに震えるのを押さえながら、歩きつづけました。自分の意思ではなく、振り向いてしまいそうでした。あと少しで自分の家にたどり着こうとしたときでした。女の足首になにか柔らかいものがからまり、転んでしまい、その拍子に後ろを振り向いてしまいました。そこには、自分と同じ服装をした自分がいました。
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