2008年2月28日木曜日

21 青い海は少女を知っている

 強い日差しが照りつける、見渡す限り眩い、青い海。
少女の遺体は、その海にゆらりゆらりと漂っていた。
白いワンピース、白いソックスに片方だけの黒い革靴。
遺体の腐食は、激しかった。

 そこへ、回遊するイルカの群れがやってきた。
少女の周りを大きな円を描きながら泳ぎ始める。
しばらく回ると、その中の一頭が、少女に近づいていき、少女の腕に鼻を軽くあてる。
少女の身体が、揺れる。
まわりのイルカたちも少女の身体に触れる。
そのたびに、少女の身体は、ゆらゆらと揺れ続けていた。
イルカたちは、再び、少女の周りを回り始めた。
左まわりにグルグルと回り続ける。
しばらく回ると、二頭のイルカが少女の両腕をそれぞれに咥え、もぐり始めた。
仲間のイルカも二頭についていく。
イルカたちは、どんどんもぐっていく。
太陽の光りが届きづらくなってきたほの暗いところで、少女の腕は、放された。
少女の身体は、浮かび上がることもなく、音もなく静かに暗い海の底へと舞い落ちていく。
 イルカたちは、その場でしばらく旋回していたが、
少女の姿が完全に海底の闇に溶け込んでしまうと、いっせいに海面へと急浮上してゆく。
イルカたちは、海面が近づいてもスピードを弱めようとせず、海面を突き抜けていった。
強い日差しの外気に次々と身体を踊らせ始めた。
水しぶきを上げる曲線美の美しいイルカたちの身体は、光り輝いていた。
イルカたちは、しばらくジャンプを続けると、徐々にその場を離れて去っていった。

 その間も、少女の身体は、深海へと落ち続けている。
やがて、少女の身体は、暗い砂地の海底にうつぶせにそっとたどり着いた。
すぐに、足が異様に長い白いカニが少女に近づいてきた。
ザワザワと大量のカニが引き寄せられるように集まってくる。
少女の身体は、白いカニで覆い尽くされ、白い物体の塊りようになった。
カニたちは、少女の身体をハサミでちぎり取り食べ始める。
しばらくすると、白い物体の中ほどが盛り上がり始め、
激しい砂ぼこりをあげ勢いよく海底から離れ、上昇していった。
白い物体から、次々とカニたちが落ちてゆく。
少女の裸体が現れた。
長い髪をなびかせ上昇していく少女。
生き生きとした身体には、傷ひとつなく、完璧の形を成してしている。
大きく見開かれた眼は、頭上に光り輝く海面へと注がれている。
海面が近づいてきても、少女の上昇スピードは弱まらず、勢いは増していく。
少女の身体は、海面を突き抜けた。
海面高く、大きく飛び出す。
ギラギラと照りつける太陽を全身でうけ、光り輝く少女の裸体。
そのまま海中へと、白い泡をいくつもたてながらと落ちてゆく。
仰向けに浮かびあがってきた少女に、意識はなく、
再び、広い海を漂い始めた。

それから一時がたち、 照りつける太陽が雲に隠れ始めたとき、
白い大型クルーズ船が少女の傍に停まった。

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