その夜は、強い雨だった。
人通りが少なくなった小道を赤い傘をさした女は歩いていた。
ヒールの音が辺りに響いている。
道の端に積み上げられている箱が動いた。
女は、びくついて、足がとまる。
その箱を凝視する。
箱の間に人の腕らしきものが見える。
苦しそうなうめき声が箱の奥のほうから聞こえてくる。
女は恐る恐る近づいて、覗き込む。
箱の一つをどかした。
そこには、若い男がびしょ濡れで倒れていた。
上半身裸である。
無数の傷から血が流れだしている。
女は、駆け寄り助けようとする。
男は、目をつぶったまま、女に近づかないようにいい、箱の奥の方へにじり寄っていこうとする。
女は、男の言葉には従わず、男の体を支え起こそうとする。
男の背中に手を回したとき、何かに触った。
男の背中には、羽が生えていた。
女は、突然、意識が遠のいていった。
女が倒れる。
女が目を開けた。
そこは、箱が積み上げられた箱の間だった。
女は、倒れていた。
自分がいつ倒れたのか、分からなかった。
女は、転がっている傘をとり、よろめきながら歩き出した。
雨は、降り続いている。
男を助けようとした記憶は女にはなかった。
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