男が、部屋に帰ってきたのは、午前零時を過ぎたころだった。
商社に勤める男は、この時間まで接待をして、疲れきっていた。
部屋に入るとすぐに、ソファーに横になり眠りに落ちていった。
数時間が過ぎた頃、男は、喉が渇いて目がさめた。
冷えたミネラルウォーターを飲もうと冷蔵庫を開けた。
まぶしい光が部屋にこぼれる。
冷蔵庫の中には、小さく身をまるめて、少年が入っていた。
男は、飛びのいた。
大声で叫ぶ。
「うおおー」
少年は、微笑んでいる。
「おじさん、怖がらないで、僕、おじさんに話があってきたんだ」
少年は、冷蔵庫から出てきた。
ソファーに座り、男に話し始めた。
明日、男が死ぬこと、だから、最後にしたいこととかをしたほうがいいといっていた。
男は、返事をせず、ただ、少年をみているだけだった。
少年は、自分は、人生の最後の人びとに死が近づいていることを教えるのが役目だといっていた。
「おじさん、よく、がんばって生きてきたね。お疲れ様でした。もうすぐ、楽になれるからね」
少年は、にこやかにそういうと冷蔵庫の中に入っていった。
ドアを閉める前に、男にいった。
「だれにも言っちゃだめだよ」
ドアが閉まると、壁掛けの時計が二時を知らせる金をならした。
男は、同時にソファーに倒れて、気を失った。
夜が明けた。
男は、会社を休み、何をするか考えていた。
しばらくして、男は、両親に電話をした。
心配かけないように、やさしく両親の近況を聞いて、体に気をつけるようにいって、電話を切った。
それから、男は、好きだった海へ出かけ、海を見ていた。
自分の長い苦しい人生を省みていた。
苦しかったがよかったような気がしていた。
男は、海を見ながら、体から、力が抜けていくのを感じていた。
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