突然、降り出した雨の日だった。
その少女は、子犬を抱いて雨やみをしていた。
辺りには、他に雨やみを待てる場所はなく、
私は、少女の横に駆け込んでいった。
少女は、悲しそうな目をしていた。
白いTシャツは、濡れて透け始めている。
少女は、自分の濡れを気にすることもなく、
濡れた子犬の身体を小さなハンカチで
ふいている。
丸っこくて、健康そうな茶色の子犬は喜んで
ちいさなしっぽを盛んに振っている。
子犬を見ている私に、少女は視線を向ける。
私は、目をそらし、路面に当たる雨を見る。
そんな私に少女は、チラチラと視線を向ける。
私も少女と子犬をチラチラと見る。
路面を見ている私の目の端に
少女の方が多く、私を見ているのがわかった。
私は、知らぬ顔をしている。
二人と一匹でしばらく雨やみをすることになった。
しばらくして、
「おじさん!?」
少女は、小さな声で私に声をかけてきた。
私は、聞こえないふりをしていた。
そうしたほうがいいような気がした。
「おじさん、犬、好き?」
初めて、声にきづいたように
私は少女の方へ顔をむける。
引きつるような笑顔で私を見ている少女。
見知らぬ男に声をかけるのに、勇気がいったのだろう。
緊張が身体から、あふれている。
「おれ?」
うなづく少女。
私は、やさしく声をだしたつもりだったが、
少女は少しびくついたようだ。
私は、見知らぬ者に笑顔を向けることが苦手なので、
真顔で少女に対している。
「おじさん、子犬、好き?」
今度は、やや大きな声で、尋ねてきた。
「うん、好きだよ」
少女は、私に両手で子犬をさしだし、
「触ってもいいよ」
少女は、ちいさな笑顔を私に向けている。
私は、しゃがんで子犬を受けとり、子犬の頭をなでてやる。
子犬は、私を恐れることもなく、小さなしっぽをプリプリふり、
私の膝に乗ろうと前足をかけてくる。
子犬の汚れた足が私のズボンを汚していく。
かまわなかった。
そのまま、頭や背中をなでてやる。
「おじさん、ズボン、汚れちゃうよ」
少女は心配そうにしている。
「いいんだ」
少女と私は、雨やみをしながら、
子犬をを二人で遊ばしていた。
雨は、なかなかやまない。
むしろ、強くなっている感さえある。
少女は、ポッケから透明ビニールに包まれた
赤くて丸いあめ玉を取り出し、口にふくんだ。
私にも、ひとつ差し出す。
私も口にふくむ。
甘くておいしい。
少女と顔を見合わせ、微笑む。
少女は、あめ玉を噛み砕いて、手の平にかけらを出し、
子犬の口元へもっていく。
子犬は、ペロリと食べてしまう。
「おじさん、いい人だね」
少女は、子犬の頭をなでている。
「大事にしてね。あげるよ」
少女は、そういうと、雨の中を駆け出していった。
私の返事を待つこともなく、少女は、いってしまった。
雨の中、私は、途方にくれ、
ただ、少女の走り去ったほうを見続けていた。
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