2008年2月28日木曜日

37 解放

その人は、暗い部屋でうづくまり、震えていた。瞳孔の開いた眼からは、涙があふれていた。自分の正体を知ってしまい、驚き、うろたえ、愕然としていた。自分を、こころやさしく、親切な人間だと考えていたその人は、昨日、それとは反対に位置する行動をしたのだった。悪魔だった。這いずり回り、命乞いをしている人間。そこへ、さらなる苦しみと恐怖を与え、発狂させ、笑っていた。喜んでいた。その人は、自分のどこに、そのような心があったのか、そのときまで、気づていなかった。求めているものとは、遠くかけ離れている自分を呪い、恐れた。なぜなら、解き放たれたものは、戻らないことを知っていたからである。

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